壊れると多発性硬化症”神経の膜” 形成仕組み初解明


ニュースソース新聞(社名不明)平成15年6月 慶応大学 医学部 解剖学
ニュースソース原文 


国内に1万人近い患者がいる神経性難病の多発性硬化症などで異常が起きる、神経線維の膜「ミエリン」ができる仕組みを慶応大医学部の中原仁医師(解剖学)らが世界で始めて解明、2日発売の米専門誌「デベロプメンタル セル」に掲載された。
 ミエリンの形成機構が分かったことで、神経難病をはじめ、神経性疾患などの病気の治療へ道を開くと期待される。
 多発性硬化症は、神経を覆うミエリンが原因不明で壊れてしまうために神経の障害が生じ、手足の麻痺や言語障害、知覚障害、視神経炎による失明といった重い障害がおきる。
 30歳前後の女性に多発、欧米には100万人以上の患者がいる。
ミエリンができる過程には、脳内に固有の物質が働いていると考えられ、その物質の特定が注目されていた。
 ところが、中原医師と東京都老人総合研究所のグループはマウスを用いた研究によって、ミエリン形成の引き金となっているのは、脳固有の物質ではなく、白血球などの免疫細胞か共通して持っている受容体(免疫グロブリンF受容体)であることを突き止めた。
 この受容体は神経細胞がミエリンを作る細胞(オリゴデンドロサイト)へと分化する過程で働いている。
 今後の研究で、この引き金となる受容体を有効に働かせることができれば、残された細胞からミエリンを再生する治療法につながる可能性がある。
三浦正幸東京大学大学院薬学系(遺伝学)教授は「脳内での免疫由来物質の働きを明らかにした世界的な発見」と評価する。
 また、多発性硬化症治療が専門の山村隆国立精神・神経センター神経研究所免疫研究部長は、「実際の治療に応用できるまでには、まだ多くの段階が必要だが、今回の研究に期待したい」と語った。

FAXでの患者さんよりの情報のため一部文章が欠落しており、同様な内容から、欠落部を引用しています。
事実関係の大筋は確認できるよう、一部文章を書き換えました。


リウマチ病状改善 大阪府立母子医療センターが新治療法 自己免疫疾患根治に道
                                 
                                 2000/09/20 大阪朝刊 2頁 (全796字) 


 ◆異常なリンパ球を一掃→自身の造血幹細胞移植

 若年性関節リウマチなど自己免疫疾患を対象に、異常なリンパ球を一掃したうえで患者自身の造血幹細胞を移植する治療法を、大阪府立母子保健総合医療センター小児内科(河(かわ)敬世部長)が昨春以降、患者3人に実施し、うち2人は病状が大きく改善した。患者数の多い各種の自己免疫疾患の根治に道を開くことが期待される治療法で、国内での本格的実施は初めて。21日から大阪市で開かれる日本小児血液学会で発表する。

 自己免疫疾患には全身性エリテマトーデス、多発性硬化症など各種の膠原(こうげん)病が含まれる。リンパ球が自分の体を攻撃する抗体を作るのが原因で、ホルモンや免疫抑制剤で進行を抑えるが、効果の乏しい患者もおり、身長が伸びないなどの副作用もある。

 同センターは、難治性の若年性関節リウマチ患者から、リンパ球や赤血球などのもとになる造血幹細胞を骨髄または末梢(まっしょう)血から採取。抗がん剤などで体内の異常なリンパ球を殺したあと、幹細胞を移植した。

 その結果、十三歳女性は現在まで八か月以上、服薬が必要ないほど良好な状態が続いており、二十一歳女性もかなり改善して四か月余り経過した。三歳男児はまもなく関節痛や発熱などが再発した。

 白血病や再生不良性貧血などで行う骨髄移植との違いは、自分の幹細胞を移植する点。再発の可能性は残るが、移植時の安全性は高いという。

 この治療法の自己免疫疾患への応用は二年ほど前から欧州で始まり、二百例余り実施。国内ではほかに徳島大小児科が昨年夏、若年性関節リウマチの十六歳男性に行い、順調に経過。東京医科歯科大でも全身性エリテマトーデスの十三歳女性に行っている。

 小寺良尚・名古屋第一赤十字病院骨髄移植センター長の話「他の治療法の効果やリスク、生活の質をよく検討し、患者への説明など手順をきちんと踏むことが大切だ」

上記ニュース掲載新聞画像へ


神経難病治療に道                      2000/8/28 愛媛新聞報道


ハンチントン舞踏病や脊髄小脳変性症など8つの重い遺伝性神経難病で、原因遺伝子に共通する長い繰り返し配列部分が作る物質が神経細胞の核の中に入り込み、遺伝子の働きを妨害していることを、新潟大脳研究所神経内科の大学院生下畑享良さんと辻省次教授、筑波大応用生物化学系の中島講師らのグループが突き止めた。

原因遺伝子に共通するのは3塩基の繰り返しが長く続く部分で、ここからポリグルタミンという毒性の高い物質が作られ、脳の神経細胞を殺すと考えられている。

これまで、この物質が神経細胞の閣内に凝集する事はわかっていたが、単独ではなく、何かのたんぱく質にくっついて遺伝子の働きを妨害すると考え、酵母などを使い調べた。この結果、遺伝子の読み出しを始める「転写因子」の構成要素であるTAF130というタンパク質にくっつき、読み出しを妨害することをつきとめた。

試験管レベルでは、このTAF130を補うと神経細胞の働きが完全に回復する事も確認された。        辻教授は「今回、発病メカニズムがわかっただけでなく、これまで戻らないと考えられていた神経の変性疾患が可逆的な事もわかってきた。すぐに人に使える訳ではないが、発病阻止に向けていくつもの方法が考えられる。 早めに診断し、早めに治療ということが現実になりそうだ」と話している。

                                  

(愛媛新聞 12.8.28)


クリントン大統領、ヒトゲノム解読完了を発表へ

2000 年 6 月 26 日


[ワシントン 25日 ロイター] クリントン米大統領は、人間の遺伝情報(ヒトゲノム)の解読が完了したことを発表する式典を主宰する。ホワイトハウス当局者が明らかにした。大統領は、科学の画期的な進歩を記念するこの式典を、26日の米東部夏時間午前10時(日本時間午後11時)に、ホワイトハウスで行う。この解読に、しのぎを削ってきた公的機関のプロジェクトと米バイオ・ベンチャー企業、セレーラ・ジェノミクス社の双方の代表団の出席も見込まれている。


多発性硬化症 遺伝子治療で改善 2000/3/13 新聞報道

マウス実験で成功 神経変性疾患に応用も


大阪大学大学院医学系研究科の三浦正幸助教授(神経機能解剖学)らは、中枢神経系の難病、多発性硬化症の発祥に関するたんぱく質の働きを、導入した遺伝子で抑える手法を開発、マウスの実験で症状を大幅に改善することに成功した。
 神経変性疾患の遺伝子治療につながる成果として注目される。

大阪大学大学院・三浦助教授ら

多発性硬化症は、神経細胞を包んで保護しているさや(髄鞘)が壊れて神経信号が伝わらなくなり、手足の麻痺や視力障害などの症状が出る。
 神経組織に入り込んだリンパ球が作る有害な物質が、髄鞘の細胞を自殺(アポトーシス)させるのが原因の一つと考えられる。
 アポトーシスの実行役はカスパーゼというたんぱく質分解酵素であることもわかっている。

 三浦教授らは、
カスパーゼの働きを邪魔するたんぱく質の遺伝子(P35)を組み込んだマウスの受精卵を雌マウスの子宮に入れて出産させた。
 受精卵の分裂時期にP35が発現すると悪影響が出るので、この間は発現しないよう特殊な細工をした。

 P35を導入したマウスと、普通のマウスのそれぞれに、多発性硬化症によく似た症状を起こす薬を投与し
その後の経過を比べた。
 その結果、普通のマウスは投与20日目ごろにほとんど動けなくなったのに対し、P35を導入した方は、しっぽの動きが鈍くなる程度の軽症ですんだ。

 三浦助教授によると、臨床応用としてはP35の作るたんぱく質と同様の作用を持つ薬を開発し、多発性硬化症などの軽症患者の脳内へ導入する方法が考えられる。
 脊髄の損傷が原因で起こる二次的な髄鞘の変性防止にも応用できる可能性があるという。